マンション価格高騰が賃貸オーナーに与える影響と今後の戦略とは?
マンション価格高騰が賃貸オーナーに与える影響と今後の戦略とは?
2025年に入り、都市部を中心にマンション価格の高騰が顕著になっています。
不動産経済研究所の最新データによると、首都圏の新築マンション平均価格は1戸あたり1億円に迫る勢いであり、中古マンションも同様に価格上昇が続いています。
東京23区では築20年以上の中古マンションでも、5年前と比べて2割以上の価格上昇が見られる地域もあるほどです。
このような状況は、分譲マンション購入を検討している層だけでなく、すでに賃貸物件を所有しているオーナーにとっても大きな影響をもたらします。
本コラムでは、マンション価格の高騰が起きている背景を分析し、賃貸経営に与える影響、そして今後の展望とオーナーが取るべき対応策について解説します。
なぜマンション価格はここまで上がっているのか?
なぜ2025年にマンション価格がこれほど上がっているのでしょうか。
その理由は、建築費の上昇や海外からの投資、そして都市部への人口集中など、いくつかの要因が重なっているためです。
ここでは、主な背景をわかりやすく整理します。
建築コストの上昇
2020年代に入ってから、鉄筋やコンクリートなどの建築資材の価格が大きく上がりました。
さらに、建設業界では職人不足が深刻化し、人件費も高騰しています。これらが重なり、新築マンションの建築コストが大幅に増加し、その分価格も上がっています。
海外投資マネーの流入
円安の影響で日本の不動産が割安に見えることから、2023年以降、外国人投資家の購入が増えています。
特に東京や大阪などの大都市では、資産運用を目的とした買いが活発です。
こうした動きが価格を押し上げ、購入を希望する日本人にも影響を与えています。
都市部への人口集中と住宅ニーズの変化
コロナ禍で郊外への移住が一時的に進みましたが、最近は企業の出社再開により都心回帰が進んでいます。
通勤に便利な駅近のマンションや生活環境が整ったエリアの人気が高まり、高所得層を中心に立地や設備を重視した購入が増えています。
再開発エリアも価格上昇を後押ししています。
価格高騰が既存オーナーにもたらす“追い風”と“逆風”
マンション価格の高騰は、分譲マンション購入を検討する人々にとって大きな負担となる一方で、すでに不動産を保有している賃貸オーナーにとっては、資産価値や収益性に関わるさまざまな影響を及ぼしています。
ここでは主に3つの側面から、その具体的な影響を整理していきます。
1. 保有物件の資産価値が上昇
もっとも直接的かつポジティブな影響は、保有している物件の評価額が上昇している点です。
都心や再開発エリアに位置する物件、あるいは駅徒歩圏内や設備が充実した築浅物件では、過去に取得した価格と比べて大きな含み益が生じているケースもあります。
不動産業者による査定価格が上がれば、物件を売却することで利益を確定する選択肢も視野に入ります。
また、金融機関からの担保評価額が上がることで、追加融資や借換え(リファイナンス)を有利な条件で進めることが可能になり、資金調達の柔軟性が高まります。
ただし、資産価値が上昇しているからといって必ずしも売却が正解とは限らず、将来的な収益性や税制、相続の観点も踏まえた判断が求められます。
2. 賃料水準の引き上げ余地が広がる
マンション価格の上昇は、住宅購入を諦めざるを得ない層を一定数生み出しています。
その結果、賃貸住宅への需要が相対的に高まり、とくに立地や設備の優れた物件には「住み替え層」や「準富裕層」が流入する傾向が強まっています。
このような需要の変化は、エリアによっては賃料水準を引き上げるチャンスとなります。
実際、東京23区内では2020年から2025年にかけて、築浅・駅近物件を中心に賃料が10~15%程度上昇している地域も見られます。
賃料アップを図る際は、既存入居者への配慮も必要です。
更新時の段階的な改定や、退去後の再募集で新賃料を設定するなど、トラブルを避けつつ収益性を向上させる戦略が求められます。
3. 新規物件取得のハードルが上昇
一方で、今後の買い増しや新規投資を検討しているオーナーにとっては、物件価格の高騰が大きな障壁となっています。
新築物件はもちろん、中古マンションでも利回りが極端に低下しており、とくに都心部では表面利回りで5%を超える物件を見つけることは難しくなっています。
このような状況下では、「高利回りを狙う」投資ではなく、「資産の保全性や将来の安定収益」を重視した長期的な視点が必要になります。
また、築年数が進んだ物件をリノベーションすることで価値を再生させたり、シェアハウスやSOHO利用といった用途変更も視野に入れた柔軟な運用が求められます。
また、価格が高いうちに一部物件を売却し、キャッシュポジションを高めておくなど、リスク分散を意識した資産戦略も検討すべき段階に入っているといえるでしょう。
今後のマンション価格動向を左右するポイント
2025年現在、マンション価格は高止まりの様相を呈していますが、この傾向が今後も続くとは限りません。
不動産市場は金利や経済情勢、人口動態などの変化に敏感に反応するため、数年単位で大きく環境が変わることもあります。
ここでは、今後の市場動向を左右する2つの大きな要素について整理します。
金利動向が市場の流れを左右する
2024年、日本銀行は長らく続けてきたマイナス金利政策を解除しました。
ただし、解除後も政策金利は極めて低い水準にとどまっており、金融緩和の基調は当面維持されています。
とはいえ、物価上昇や海外との金融政策のバランスを背景に、2025年以降は段階的な利上げの可能性が現実味を帯びています。
住宅ローン金利の上昇は、分譲住宅の購入検討者にとって直接的な負担増となるため、購入意欲を冷やす可能性があります。
それに伴い、マンション価格にも調整圧力がかかることが予想されます。
ただし、欧米諸国と比較して日本の景気回復は緩やかであり、日銀が急激な利上げに踏み切る可能性は低いと見る専門家も多いのが現状です。
住宅ローン金利と販売価格の関係
一般に、住宅ローンの金利が上昇すると、購入者の毎月の返済負担が増えるため、購入可能な物件価格は相対的に下がる傾向があります。
たとえば、金利が1%上昇すると、同じ返済額で購入できるマンションの価格は約5~10%程度下がると試算されることが多いです。
逆に、金利が低い水準にある間は、借入負担が軽減されるため、消費者の購入意欲が高まりやすく、マンションの販売価格が高止まりもしくは上昇する傾向があります。
この関係は市場の需給バランスや金融政策、経済の先行きと複合的に絡み合うため単純な数値だけで判断できませんが、金利の動向はマンション価格の重要なファクターであることは間違いありません。
住宅需要の二極化が鮮明に
もう一つ注目すべきは、住宅需要の二極化です。
人口減少と世帯構成の変化が進む中、全体の住宅需要は確実に縮小していくと見られています。その一方で、エリアによっては今後も強い需要が続くと考えられます。
特に、都心部・駅徒歩圏内・再開発エリアなど、いわゆる「選ばれる立地」にある物件については、購入・賃貸いずれの需要も底堅く、価格や賃料の下落リスクは相対的に低い傾向があります。
インフラ整備や利便性の高さ、資産価値の安定性が評価され、今後も投資先として注目され続ける可能性が高いといえるでしょう。
一方、郊外や地方、駅から遠い築古物件などは、相対的に敬遠されやすくなっており、空室リスクや賃料下落リスクが顕在化しやすい環境に置かれています。
こうした格差は今後ますます拡大し、「立地で選別される時代」が本格化していくと考えられます。
賃貸オーナーとしては、自身の保有物件がどのゾーンに該当するのかを冷静に分析する必要があります。
そのうえで、リノベーションによる付加価値向上、用途の見直し、場合によっては売却による資産の入れ替えなど、立地や物件特性に応じた柔軟な経営判断が求められる時代です。
賃貸オーナーが今取り組むべき戦略
マンション価格が高騰し、市場環境が大きく変化している中で、賃貸物件のオーナーにはこれまで以上に慎重かつ戦略的な対応が求められています。
ここでは、今後の変動リスクに備え、収益を維持・向上させるためにオーナーが取り組むべき主な対応策を整理します。
保有物件の立地・市場価値を見極める
まず重要なのは、所有する物件がどの市場環境に置かれているのかを正確に把握することです。
前述のとおり、需要が高い都心・駅近・再開発エリアの物件は安定した収益が見込めますが、郊外や築古の物件は空室リスクや賃料下落リスクが高まっています。
そのため、定期的に周辺の不動産動向や賃貸市場の動きを調査し、物件の市場価値を把握することが欠かせません。
必要に応じて専門家の意見を取り入れ、今後の資産運用の方向性を検討しましょう。
リノベーションや設備投資で付加価値を高める
築年数が経過した物件の場合、設備の老朽化や内装の劣化が入居者の敬遠理由となりやすいです。
こうした課題を解決し、他物件との差別化を図るために、リノベーションや最新設備への投資は有効な手段です。
具体的には、賃貸物件にとって必要な設備の導入や、ニーズに合わせたデザインを取り入れることなどが必要です。
これにより、賃料の維持・引き上げや空室率の改善が期待できます。
イエスリノベーションでは、賃貸物件を専門としたデザインリノベーションを行っています。
10年以上賃貸物件を専門として、たくさんのオーナー様のお悩みを解決してまいりました。
空室でお悩みのオーナー様は一度ご相談ください。
現地調査・お見積もりは無料です。
用途変更や売却も視野に入れる
立地や築年数の問題から、長期的に収益が見込みにくい物件については、用途変更や売却といった選択肢も検討すべきです。
用途変更では、住宅から事務所や店舗、シェアハウスなどへの転用を検討するケースもあります。
地域のニーズや規制を踏まえたうえで、専門家と相談しながら柔軟な対応を進めることが大切です。
また、売却を選択する場合は、市場価格の高いタイミングを見極めることがポイントです。
資産を流動化して得た資金を、より将来性のある物件への投資に振り向ける戦略も有効です。
賃貸管理体制の見直しと入居者対応の強化
マンション価格の高騰に伴い、入居者の目も厳しくなっているため、賃貸管理の質を高めることも重要です。
信頼できる管理会社の選定や、定期的なメンテナンス、迅速なトラブル対応を徹底することで、入居者満足度を向上させ、長期入居を促進できます。
また、ペット可やリモートワーク対応など、時代のニーズに合わせた入居条件の見直しも検討しましょう。
入居条件の見直しについてはこちらの記事で詳しく解説しています!
賃貸オーナーが市場の変化に柔軟かつ的確に対応することが、安定した収益と資産価値の維持・向上につながります。
今後も動向を注視しつつ、状況に応じた戦略的な経営判断を行うことが不可欠です。
これからの賃貸経営に必要な視点
2025年におけるマンション価格の高騰は、多くの人にとって「買いにくい」「手が届かない」といったネガティブなイメージを強めています。
しかし、賃貸物件を所有するオーナーにとっては、資産価値の上昇や賃貸需要の増加という追い風になる面もあります。
価格が高騰することで、物件の価値自体が高まり、資産形成が加速する可能性があるためです。
とはいえ、すべての物件が同じ恩恵を受けられるわけではありません。
立地の良し悪しや建物の管理状態、さらにオーナー自身の運用戦略によって、資産価値や収益性に大きな差が生まれる時代に突入しています。
人気のある都心や駅近の物件は安定した賃貸需要が見込めますが、郊外や築年数の経った物件は空室リスクが高まる傾向にあります。
こうした状況を踏まえ、今後の市況変動に備えるためには、冷静かつ柔軟な対応が欠かせません。
保有資産の「質」をしっかり見極めるとともに、賃貸経営や資産運用の「活かし方」を見直す絶好のタイミングとも言えるでしょう。
例えば、リノベーションや設備のアップデートによって競争力を高めたり、必要に応じて売却や用途変更を検討するなど、状況に応じた戦略を立てることが重要です。
総じて、価格高騰の背景と自分の資産の特徴を理解し、長期的な視点で賃貸経営を見直すことが、これからの不動産投資成功の鍵となります。